政府は9月、物価高騰を受けて住民税の非課税世帯を対象に1世帯当たり5万円の給付金支給を決定しました。
東京都も、エネルギー価格の高騰等で売上高が減少している中小企業を対象に支援金を支給することを決定しています。
これらからは、昨年までのデフレ(物価の継続的下落)から、インフレ(物価の継続的上昇)に変化したように見えます。
しかし、一連の値上げは2022年になって急に実施されたわけではありません。
価格の引き上げは、すでに1年以上前から顕著となっていました。
なぜ商品の価格が上がっているのに、私たちはそれに気づかなかったのでしょうか。
その理由は、消費者には見えにくい形で値上げが行われていたからです。
企業は商品を仕入れ、それに付加価値を乗せて消費者に販売しています。
景気がいい状態であれば、企業の仕入コストが上昇した分は、容易に価格に転嫁することができます。
ところが、不景気のときには消費者の購買力は低下しますから、一部の企業では価格を据え置いて内容量を減らす、あるいは製品の質を下げるなど、外からはわかりにくい形で値上げを実施します。
200円の価格で内容量が10個だったお菓子が、価格は同じ200円のまま、内容量を8個に減らすといった措置がこれに該当します。
こうした値上げを、巷では「見えにくい値上げ」という意味で「ステルス値上げ」などと呼んでいます。
同様に、価格を据え置きつつ、使用する素材の質を落とすという形でコストを削減する方法もあります。
150円のキッチンペーパーはB品質、200円のキッチンペーパーはA品質だったと仮定しましょう。
企業は製品ラインアップを一新する際、200円のキッチンペーパーにB品質の素材を用い、従来200円の製品で使っていたA品質の素材は、さらに価格が高い300円のキッチンペーパーで使用します。
製品の品質について吟味する消費者であれば、質が下がったことがわかりますから、お金に余裕がある人は300円の商品に切り換えるでしょう。
一方、そこまで品質を気にしない人の場合、従来と同じ価格帯である200円の商品を継続購入すると考えられます。
製品体系全体で考えれば、より高い価格帯にシフトできたことになりますから、実質的な値上げということになってしまいます。
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