早稲田大学スポーツ科学学術院は、国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所と、公益財団法人明治安田厚生事業団体力医学研究所、京都先端科学大学と研究チームを組んで共同して、
65歳以上の地域在住高齢者4,165名を対象に三軸加速度計から評価した歩数と死亡との量反応関係を検討し、
高齢者のフレイルの有無によって、死亡リスクを減らすための1日当たりの最適な歩数が異なることを世界で初めて報告しました。
本研究成果は、
『Medicine & Science in Sports & Exercise』(論文名:Dose-response relationships between objectively measured daily steps and mortality among frail and non-frail older adults)
にて、2023年2月2日にpublish ahead of printがオンラインで掲載されました。
その後、2023年6月に雑誌に掲載される予定とのことです。
(1)これまでの研究で分かっていたこと(科学史的・歴史的な背景など)
フレイルとは身体的機能、精神的および社会的な活力などの心身の予備能力の低下が見られる状態であり、健康な状態と要介護状態の中間に位置します。
フレイルは年齢と共に該当者が増加するため、日本を含む高齢社会を迎える国々が抱える健康問題の1つです。
フレイルには「適切な介入により再び健康な状態に戻る」という可逆性が包含されているため、フレイルの状態を改善し得る生活習慣等が世界中で研究されています。
身体活動不足は健康に悪影響を及ぼし、寿命を縮めます。
1日当たりの歩数は誰でも簡単に理解することができる身体活動量の客観的な尺度です。
歩数は身体活動量の目標設定を容易にし、自身の歩数を知ることで身体活動量を増やす動機付けを高めるために効果的です。
従って、寿命を延ばすために高齢者が日々達成可能な歩数の目標値を設定することが重要です。
しかし、高齢者の客観的に評価した身体活動量と死亡との関連が、フレイルの有無によって異なるかどうかは不明でした。
(2)今回の研究で新たに実現しようとしたこと、明らかになったこと
研究チームは、2011年から京都府亀岡市で行われている介護予防の推進と検証を目的とした前向きコホート研究である、
京都亀岡スタディに参加した4,165名のデータを使用しました。
三軸加速度計で歩数を評価し、歩数の少ない人から順番に並べて同程度の人数になるように4グループに分けました。
私たちは歩数を評価してから中央値で3.38年間追跡調査をおこない、死亡の発生状況を確認しました。追跡期間中に113名の方が亡くなりました。
歩数が最も多いグループと比較して歩数が最も少ないグループでは生存率が有意に低い(死亡率が高い)ことが示されました。
歩数が多いほど死亡リスクが下がるという関係は、約5,000~7,000歩で効果が底を打つことが示されました。
1日当たりの歩数が5,000歩未満の者が歩数を1,000歩増やすことで死亡リスクは23%低下しますが、
5,000歩以上の者が歩数をさらに増やしても有益な効果は見られませんでした。
現状ですでに歩数が多い人はもちろんですが、座りがちで歩数の少ない高齢者も、
今より少しでも歩数を増やすことでより長生きできる可能性が高まることが、研究によりわかったとのことです。
こちらからは以上です。お読みいただき、ありがとうございました😊