今回はマンションの価格の話です。
人間の心の動きというのは、何とも捉えどころがないものである。
人間が全員法則通りに動くのなら、経済学という学問はもう少し実用的なレベルに達しているはず。
しかし、そうではないので経済学はいまだに使えない。ノーベル賞級の経済学者が束になって政策を立案し、それを実行しても、不況を避けられないのがその証拠。
それを「合成の誤謬」といってごまかしている。
同じくバブルも繰り返される。最初は17世紀にオランダで起こったチューリップバブル。
18世紀の初めに起こったイギリスの南海泡沫事件も有名。
日本が経験したのは、1980年代後半の平成大バブル。
さらに2000年代のファンドバブル。そして、今回の局地バブル。
平成大バブルは金融政策が緩和から引き締めに転じたことで崩壊。
ファンドバブルはリーマン・ショックが崩壊のトリガーだった。
今回の局地バブルはどうだろうか。
今の情勢だと、中国の不動産バブル崩壊がきっかけになりそうな気配である。
北京や上海、深圳の一等地にあるありふれたマンションは、平均的な所得層の人の年収の100倍らしい。
中国から見ると、東京の不動産はまだまだ安い。
「上海でマンションを1戸買う値段で、東京ではビル1棟が買える」などと言われる。
だから、彼らは今、日本の不動産を買いまくっている。
その中国で、いよいよバブルが崩壊しそうな流れになっている。
ニュースによく出てくる恒大集団という企業のほかにも、経営が破綻しそうな不動産会社が20以上あるという。
中国共産党政府が救済に動いている気配はない。むしろ経営者に対して「私財をなげうってでもデフォルトにするな」と指導しているらしい。
日本の平成大バブルが崩壊したとき、その影響は国内で留まった。
今回、中国の不動産バブルが崩壊しても、日本には関係がないという考え方もある。
しかし、今の日本も地域が限られているとはいえ、不動産はバブルである。
東京のマンションの価格は、あの平成バブル期を超えている。
冷静に考えると、こんなことが続くはずがない。
東京23区の端っこの方でも、マンションの価格は平均年収の10倍を超えている。
いくら住宅ローン金利が過去最低でも、これではなかなか買えない。
現に郊外では新築マンションが売れていない。
こういう異常事態は、何かが起きれば簡単に崩れる。
それが中国の不動産バブル崩壊かもしれない。
中国人が買った、日本の不動産を一斉に売り出したらどうなるのか。
成長が止まり、人口も減っている日本で、一部地域だけとはいえ、マンション価格が上がり続けていること自体、少し異様な状態であり、それはいつか是正される可能性が高い。
~おしまい~