生活保護を申請することは国民の権利であり、制度の趣旨を考えれば、要件に該当する人にはすみやかに給付する必要があるのだが、現実は異なる。
財政難から現場では支出を抑制する傾向が顕著となっており、申請しても給付されないケースが多い。
給付が邪魔される典型例は、「住所がないから申請できない」といって追い返されてしまうことである。
生活保護は住所がなくても申請できる仕組みになっているし、制度の趣旨を考えればむしろ当然のことである。生活困窮者は賃貸住宅を追い出される可能性が高いので、住所がないと申請できないというのは本末転倒である。
だが、多くの人は制度の詳細を知らないので、窓口でこのように言われてしまうと申請を諦めてしまう。
もう1つは扶養照会である。日本の場合、生活保護が申請されると申請者の親族に対して援助できるか問い合わせが行われるが、この仕組みは実質的に申請を諦めさせる手段として使われている。
もし親族に援助できる人がいるのなら、とっくに援助を受けているはずである。
親戚に頼れないからこそ生活保護を申請しているケースが圧倒的に多いはずだ。
親族との関係が良好ではなく、生活困窮状態を知られたくない人も大勢いるし、場合によっては親族から虐待を受けている可能性もある。
扶養照会は重大な人権侵害を引き起こすリスクがあるため、先進諸外国ではほとんど行われていない。
欧州には手厚い社会保障制度が存在していることは多くの人が知っていると思うが、米国は弱肉強食で福祉がないというイメージを持っているかもしれない。
だが現実には米国にも多くのセーフティネットがあり、日本における生活保護に該当する仕組みも存在する。
苛烈な競争社会である米国でさえ、要件さえ満たせば十分な水準の生活保護(具体的には食料配給券、家賃補助、低所得者向け医療保険、養育支援、給食無料券などの各種制度を総合したもの)が支給されるし、人口あたりの社会保障予算も実は日本よりも多いというのが現実です。
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