富裕層ほど下がる「実質税率」
個人が給与や商売の利益などを得ると、所得税がかかる。
所得税は、ある人が得た所得を合計して課税する「総合課税」が原則で、所得が高いほど税率が上がる7段階(5~45%)の累進課税だ。
さらに、住民税は個人所得に原則10%(所得割り)を課す。
だが、実際には、所得が高くなればなるほど、税負担が増えるわけでもない。
国税庁の調査で、合計所得金額に占める所得税額の負担率をみると、合計所得金額が「5000万円超1億円以下」での負担率27.1%をピークとし、これを境に所得が高くなると負担率は逆に下がる。
これは「1億円の壁」と呼ばれる。
「1億円の壁」ができる要因は、金融所得課税のあり方が大きいとみられている。
所得のなかでも、株式譲渡益(キャピタルゲイン)、利子所得、配当所得などの金融所得は、他の所得と切り離して課税する「分離課税」方式をとる。
金融資産の海外逃避を防ぎ、課税の簡潔さや中立性・効率性を保つのが狙いとされる。
金融所得の税率は、所得の額に関わらず一律で、所得税15%(復興特別所得税含まず)、住民税5%の計20%だ。所得税の最高税率55%と比べ負担は軽くなる。
高所得者層ほど一般に、所得に占める金融所得の割合が大きいため、実質的に所得税の負担率を下げることができる。
これが「1億円の壁」を生み出していると考えられる。
金融所得課税が富裕層を優遇しているとして、公平性の観点から、見直し議論が浮上している。21年12月の与党税制改正大綱は「検討する必要がある」と明記し、岸田文雄首相は「議論を続けていきたい」とする見解を示しているということです。
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